2014年6月13日金曜日

【連載】プロジェクトコストの見積り 〜ボトムアップ見積もり編 - 2〜

<前記事からの続きです。


ボトムアップ見積りは成果物や作業を分解し、それら要素ごとに必要なリソース量を見積もって積み上げる方式です。一見もっとも確実で精緻な方法に思えますが、これだけでは実際多くのことを見落とします。

例えば、あるシステム導入プロジェクトに於いて、ネットワークの敷設(ケーブルやルーターの設置、設定を含む)が必要だとして、下記の作業および工数が見積もられたとします。
・ネットワークの概要設計(7人日)
・詳細設計(10人日)
・ケーブル工事(8人日)
・ルーター設定(3人日)
・疎通テスト(1人日)
・パフォーマンステスト(1人日)

これで合計30人日ですね。この30人日に(根拠不明の)予備を加算してお仕舞い、となります。しかしこれは実際のリソースの配置が考慮されておらず、また将来のコストコントロールの仕組みとの整合性もありません。


リソース配置の観点から
モチベーション維持やチームビルディング、契約管理を考えると、一定期間纏まった、ワークロードに波の無いアサインが望ましいです。作業がたまたま連続していれば良いですが、通常作業と作業の間には待ち時間(ラグタイム)があります。このラグタイムをどのように扱うかしっかり考えておかねばなりません。

システム導入プロジェクトの場合、通常アプリケーションの開発も伴うので、そちらの進捗と合わせる必要もあり、概要~詳細設計までは一気にできたとしても、ケーブル工事まで数か月の間が空くかもしれません。その間、プロジェクトはネットワークの担当者を完全にプロジェクトから外すでしょうか?コストがもったいないから外す!というなら、その人はプロジェクトの本質を理解していないでしょう。もしあなたが飛び石のようにプロジェクトにアサインされたら、あなたはプロジェクトの一員となりきれるでしょうか?

また、プロジェクトに変更は付き物です。ネットワークの詳細設計が終わっても、要件の変更やアプリケーション開発に伴って出てきた問題によりネットワーク設計の変更が必要になることもあり得ます。それらの変更に対応するため、詳細設計からネットワーク工事の間も、担当者がプロジェクトに参加し続けておく必要があります。ただプロジェクトべったりである必要はなく、ワークロードの10%(週に4時間)でも良いので変更管理委員会や週次会議に出席してもらい、設計に変更が必要なら対応してもらう、という関わりを維持してもらえばよいでしょう。もしこの期間が3か月なら、4時間x12週=48時間(6人日)となりますね。これは上記のWBSには出てこなかった要素ですが、カレンダーを使えば見えてきます。またこれは決して予備などではなく、予定され、実施されるべき作業です。優れたPMならこれすらWBSの要素として抽出できるかもしれませんが、WBSだけで明確な成果物を伴わない作業を全て抽出し、工数まで見積もるのは困難と言えるでしょう。

コストコントロールの観点から:コストの見積りは常時アップデートされなければならない
全ての成果物や作業を始めから見積もれることなど現実にはあり得ず、完了時予測コストも常に変化します。プロジェクトが進むにつれ出てくる細々とした予定外作業もこなしていかねばなりませんが、WBSベースの見積りをしている場合、常時変更を取り入れ、将来の予測コストをタイムリーに出し続けることがいかに困難であるか、実際にチャレンジした経験のある方ならお分かりになると思います。追加作業が既存のWBS要素に当てはまるのか、追加要素なのか、どのレベルなのかの判断すら難しい、あるいは”やってられない”ことも多いですよね。結果当初作られたWBSの更新をあきらめ、コスト見積りの予測も感覚で行われていくといういつものパターンに陥ります。こうなってしまうと、コストコントロールのみならず、スケジュールコントロール、品質コントロールも失われていると言えるでしょう。

しかしどんな作業も”いつか”、”誰かが”行うのであれば、それをカレンダーに書き込むことは可能でしょう。そしてその作業が担当者のワークロードに影響を与えるならそれを計算すればよいですし、影響を与えない程度のことであればコストも変わらないと言えるでしょう。実際、小さな追加作業くらいでコストは変わりませんが、WBSで管理していると細々と追加、再計算することになり、むしろ現実と乖離していくことすらあり得ます。それに、何かが追加になる陰で、不要になる作業もあるのです。あなたは、そんなことまで管理できますか・・?

>> 続きは後日


■連載
プロジェクトコストの見積り 〜ボトムアップ見積もり編 - 1〜
プロジェクトコストの見積り 〜ボトムアップ見積もり編 - 2〜 (当記事)
プロジェクトコストの見積り 〜ボトムアップ見積もり編 - 3〜

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