2014年6月13日金曜日

類型見積り

類型見積りは、プロジェクトの初期段階など、詳細情報が乏しい段階に概算見積りを出すために使われる手法です。過去の類似プロジェクトの規模やコストから類推されたりします。

短時間で見積もりできますが、いかんせん精度が低いためPMからするとあまり頼りたくない見積り手法ですが、発注側からすれば類型見積りや係数見積りといった概算見積りはポートフォリオ管理やプロジェクトの実施を決定する際に必ず必要となるものなので、現実には逃げられないと言えるでしょう。

しかしこの類型見積りですが、注意しなければ本当に的外れな数字が出てきます。
最近担当した2つのプロジェクトも、コンサルタントやIT営業担当が出してきた見積りはあまりに実コストと乖離したものでした。

1 見積額が低すぎたケース
とある工場の部品受発注システム導入プロジェクト。既に海外で実績のあるシステムを日本に展開する。また、同じ会社の他工場で、そのシステムを導入した経験あり。

結果→プロジェクトにかかったコストはコンサルタントが行った類型見積りの3倍。

なぜ3倍もかかったか?
コンサルタントは、「同じ会社の他工場でのシステム導入に掛かった実コスト」をそのまま見積りとして出してきました。なぜなら今回のプロジェクトも95%同じシステムを導入し、同じサプライヤーに対して部品を受発注するため、同じくらいのコスト(あるいは経験があるからより低い)で出来ると考えていました。

しかしコンサルタントは重要なポイントを見落としていました。それは、前回のプロジェクトは新規工場に対して行ったものであるのに対し、今回のプロジェクトは既存の工場に対しての導入であるということです。

新規工場であれば、既に実績のあるシステムの導入は簡単です。実際やったことは日本のサプライヤーの登録と、会計システムとの連動、端末の導入及びトレーニングだけだったそうです。

しかし既存工場への導入となると話は別です。既存工場の設備は必ずしも新システムの設計とマッチしませんので、ギャップを埋める必要があります。また、多くのレガシーシステムとのインターフェースも再構築が必要です。データ移行、システム移行もビジネスに悪影響を与えないよう行うのは簡単ではありません。また、従業員への周知やトレーニングもより慎重に行わなければなりません。経験則からして、既存システムの置き換えは新規システム導入の3倍かかると言われていますが、今回もその通りになりました。

実際には私がPMに任命され、コンサルタントから概算見積りの説明を受けた時点で3倍かかる旨を伝え(キレられましたが・・)、その後の詳細見積りでもその通りの数字となり、契約前の集中セッションでなんとか理解いただけたので、プロジェクトとしてはコストオーバランは避けることが出来ました。


2 見積額が高すぎたケース
次に担当した消費税率変更(5→8%)にともなう販売システムの改修プロジェクトでは、既にIT側からの見積りが出ている状態で、業務側(発注側)も了承している段階で業務側のPMとなりました。
結果→ITコストは見積りの1/3

なぜそんなに安く?
(以降、金額は適当)業務側は来たるべき消費税率変更に備え$1 mil.準備していました。どういうわけかその金額を知っていたIT側はいろいろ予備費を積み、$0.8 mil.を見積額として提示してきましたが、業務側としては予算内なのでこれを受け入れました。結局IT側の予備費を使わせることなく$0.26 mil.で完了したためみんなハッピーだったのですが、そもそもの$1 mil.が高すぎたのが大幅な乖離の原因となっています。この金額は対象システムの数とこれまでの経験から情報システム部門が導いたものですが、5を8に変えるだけの改修であればシステムの数より帳票とインターフェースの数を見るべきでした。

(ちなみに、IT側が事前に予算を知っていたというのは通常良くないですが、他の事情もあり、この会社の場合必ずしも悪とはいえません。)


このように類型見積りは大幅な誤差を生み出すことがあります。ほんの些細なパラメータ(新規 or 置き換え、システム数 or 帳票数)を変えるだけで数倍の違いが出てきます。これらパラメータをどれだけ正確に捉えられるかが、類型見積りの成否を左右すると言えるでしょう。

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